CellQualia

技術レポートシリーズNo.005-0

Technical Report

技術レポートシリーズ No.005-0

2022/1/10 初版、3/1 改版

シンフォニアのソリューション・ラボで
CellQualia -Intelligent Cell Processing System- を使ってみませんか 

Contents

1. はじめに
2. ソリューションラボのコンセプト
3. アプリケーション開発
4. 購入検討時のデモンストレーション
5. ユーザートレーニング
6. ユーザーによる有償使用
7. 受託製造
8. 最後に

要旨:自動培養装置はスケールアップや省人化には欠かせませんが、高額な設備投資なので自社の細胞生産への適合性の評価無しでの導入はあり得ません。特に細胞や培地と装置化との相性は実際に培養してみないと分かりません。当社では CellQualia Intelligent Cell Processing Systemの試用が可能な『ソリューションラボ』を用意しました。このラボはアプリケーション開発やユーザートレーニングだけでなく、生産を目的とした有償使用や受託生産も視野に入れた仕様になっています。

はじめに

一般に、『生産技術』は目的物(製品)を商用生産できるようにする技術で、『製造技術』は質の良い製品を効率的に生産できるようにする技術であると言えます。これらとは別に『製造プロセス』という用語もありますが、これは製品の製造過程で必要となる製造工程のことを指します。

細胞医薬品の場合、現在の『生産技術』の検討は手作業で行われ、商用生産も引き続き手作業で行われる事が多いようです。その理由としては、①生産方法を変更する場合にはあらためて規制当局の確認や承認を得る必要がある(そのために追加で時間やお金がかかる)こと、②既存の細胞培養装置は依然として機能面で手作業には及ばないこと、③手作業では感覚も駆使するが現在の装置には相応の機能がないことなどが挙げられます。また、『製造技術』の検討の段階では、質の向上については手作業でも対応可能ですが、スケールアップや省人化などの生産効率の向上については装置化が欠かせません。細胞医薬品製造は将来的には QbD (Quality by Design)の適用が不可欠ですが、『製造プロセス』を評価するためには、PAT(Process Analytical Technology)を装備した装置の導入が必須となります。

※「品質は最終段階でテストするだけでなくプロセスの段階ごとに確立する必要があり、これにより最終製品の一貫した品質を得ることができる」という考え方に基づいた、開発と製造にまたがる品質管理戦略の立案と遂行。

CellQualia Intelligent Cell Processing (ICP) Systemは、最大で36層の多層フラスコが装着可能な接着細胞用の自動培養装置で、培地交換や継代を自動で行なうことができ、播種から収穫までの間のオペレーターの関与はほぼ不要となっています。また、温度やCO2といった環境データに加え、インラインで培地のグルコースならびに乳酸の濃度とpHが自動で測定でき、オフラインで様々なバイオマーカーの測定を可能とするサンプリング機能も有します。これらの機能を利用すれば、『生産技術』の開発はもちろん、『製造技術』の開発やQbDの適用も同時に行うことができます。通常のスケールアップでは培養容器の数あるいは容量を段階的に大きくしていきますが、容器のサイズや数が増えればその都度工程の最適化が必要となり、特に容器の数を増やす場合は熟練のオペレーターを増員しなければなりません。一方、CellQualia ICP Systemは少人数で複数台を操作することが可能で、装置であるがゆえに工程の品質も一定なので、増台によってスケールアップをすることになり、スケールアップに伴う工程の最適化は不要です。つまり、『生産技術』の開発の段階のような早期からの CellQualia ICP Systemの導入は、商用生産に向けた課題を一気に解決することができます。

さて、培養装置の導入自体も『製造プロセス』の変更のひとつであり、装置自体も高額なこともあって、検証なしに導入することはあり得ません。小型の装置であればデモ機の利用も可能ですが、通常は細胞製造施設への搬入や据付場所の確保などが問題となります。当社では、そのような問題を解決するため、『ソリューションラボ』を用意しました。お客様には、当社が用意した細胞やお客様がご使用の原料細胞をお持ち込み頂いて、CellQualia ICP Systemを用いた試製を行なって頂くことが可能です※※。まずは実際に装置を試用してご評価いただき、そのうえで導入のご検討を進めていただければと思っています。

※※内容につきましては表1の『購入検討時デモンストレーション』の項目をご参照ください。

ソリューションラボのコンセプト

当社ソリューションラボのコンセプトは、CellQualia ICP Systemの『アプリケーション開発、購入検討時のデモンストレーション、ユーザートレーニング、ユーザーによる有償試用、受託製造などを広くカバーするワン・ストップ・サービス』であり、常駐のスタッフがそれらに対応します。

表1 ソリューションラボの機能一覧

カテゴリー 内容 費用
アプリケーション開発 お客様からのリクエストへの個別対応(細胞種や培地種類の検討など) 要相談
購入検討時デモンストレーション 見学のみ 無料
当社細胞を用いてお客様が実施 当社規定料金(実費相当)
お客様の細胞を用いてお客様が実施 要相談
ユーザートレーニング 装置ご購入時 機器価格に含まれる
追加トレーニング 当社規定料金 /人 
有償使用 お客様ご自身が実施(当社はサポート) 要相談
お客様は細胞と製造プロトコールを提供し、当社スタッフが実施 要相談
受託製造 非臨床用途品の製造※ 要相談

※将来的には臨床用品にも拡大の予定

上記の事業を行なうため、神戸医療イノベーションセンター(KCMI、図1)の5階に図2に示すような施設を新設しました。この施設は、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(FBRI)が細胞・遺伝子治療の開発を加速するために新たに整備した細胞受託製造設備の一画に位置し、Grade Cの培地・培地調製、前培養室、 CellQualia ICP System室(将来的には2台体制とする)と、前室ならびに更衣室を備えた設計となっています。中央に見学廊下を配しているので、装置の外観のみの見学であれば随時可能です。

アプリケーション開発

現在、当社ではヒトiPS細胞(PFX#9株、FBRIにて樹立)とヒト間葉系幹細胞(MSC、脂肪組織由来)の拡大培養に対応するアプリケーションを開発済みです。他の iPS細胞株、ドナーや由来の異なるMSC、組成や添加物が異なる培地の検討については、必要に応じて順次実施します。ユーザーからの特別なリクエストに対応した検討については、基本的に細胞名や由来、結果などの情報の秘匿が必要な場合はお客様に実費をご負担して頂き、それらの情報が当社の営業活動にも制限なく使用できる場合には応相談としますので、まずは当社にお問い合わせ願います。

購入検討時のデモンストレーション

当社のスタッフが培養を行ない、お客様はそのスケジュールに合わせて来所してラボ内で培養の様子を見学するのみの場合は原則として無償とし、装置の機構や培養方法の開示に関しての秘密保持契約のみを締結して頂きます。また、ご相談に際してお客様の事業内容や製造条件の開示がある場合には機密保持契約を双方向型にも出来ますので、事前にお問い合わせください。

また、当社の細胞を用いてお客様にも装置操作に加わっていただく場合は、当社規定料金(実費相当)をご負担いただきます。機密保持契約に関しては見学のみの場合と同様です。取得したデータは全てお持ち帰り頂けますが、デモに使用する細胞(特に iPS細胞の場合) に当社以外の権利者がいる場合がありますので、細胞のお持ち帰りについてもご希望の場合には、事前にご相談させて頂きます。

なお、お客様の細胞を用いて検討を行う場合は、その内容と費用につきましては案件ごとのご相談とさせて頂きます。機密保持契約の締結下 で事前のお打ち合わせを十分にさせて頂き、検討が実りあるものになるようにと思っております。

ユーザートレーニング

装置をご購入の際のユーザートレーニング費用は、装置価格に含まれています。お客様ご希望のスケジュールに合わせて装置をご用意し、当社の細胞を用いてお客様ご自身が装置の操作に習熟できるようなカリキュラムをご提供いたします。なお、お客様の細胞をお持ち込み頂いてのトレーニングも可能ですが、その場合は装置購入検討時のデモンストレーション等によって当社にて対応可能であることが分かっていることが前提となります。

お客様側で新規スタッフを雇用された場合、有償で当社にて装置操作法のトレーニングを行なうことも可能です。内容は装置ご購入の際のトレーニングと同様で、費用は当社の細胞とプロトコールを用いる場合は当社規定料金/人、お客様の細胞とプロトコールを用いる場合は個別のご相談になります。

ユーザーによる有償使用

当ラボにてデモンストレーションによって製造適合性が確認できた後、装置ご購入までの間引き続き装置のご使用を希望される場合や、製造の頻度が低いなどのために購入までには至らないが追加での装置の使用を希望される場合には、有償にて対応致しますので当社までご相談ください。なお、施設の清浄度は Grade Cであり、当社スタッフの教育ならびにラボと装置の維持管理につきましては GLP準拠としていますので、あらかじめご了承願います。非臨床 POC (Proof of Concept) の取得用の試製品や創薬ツール細胞であれば十分な品質の細胞の製造が可能です。

cGMP製造につきましては、当社とお客様との協働で適合を図ることになります。チューブ類ならびにバッグ類は cGMP製造適合品で無菌コネクターによる接続、播種から収穫までは全て閉鎖系環境で実施されますが、施設ならびに装置のバリデーションや当社スタッフの教育訓練などが追加で必要です。当社は特定細胞加工物製造業許可を取得しておりませんので、特定細胞加工物に該当する場合の製造の許可申請・届出はお客様にて行っていただき、cGMP適合に係る追加費用のご負担をお願いすることになります。

なお、お客様が製造の実働を担い当社のスタッフがサポートする場合と、お客様のご指示に従って当社のスタッフが製造の実働を担う場合の2通りが想定されますが、それぞれのケースで当社スタッフに係る費用は異なります。また、装置に係る消耗品は当社の販売価格にてのご提供になりますのでご留意ください。

受託製造

CellQualia ICP Systemを用いた製造プロトコールが確定し、技術移管が可能な状態であれば、当社は受託製造にも対応致します。但し先に述べたように、現時点では当社は特定細胞加工物製造業許可を取得していないので、対象は非臨床用途の製品の製造に限られ、cGMP製造の受託は当社側の体制準備が整い次第ということになります。

一方、質の良い細胞ストックの作成は非臨床用途でも非常に重要であり、例えばマスターセルバンクの質や、製品製造の原料にするワーキングセルバンクの質が条件検討の再現性、最終製品の質や製造安定性に大きく関わります。細胞の性状や質は容易に変化するので、操作の手順やタイミングは一定であることはもちろん、その実施ログやプロセスのデータで評価・管理することが非常に望ましいと考えられます。また、 ES/iPS細胞は培地交換が毎日必要で、それらを人手で均質に行なうことも困難なので、ぜひ、バンクの製造依頼を検討して頂きたいと思います。

最後に

CellQualia ICP Systemは播種、継代、収穫を全自動で行ない、最大で36層の多層フラスコでの培養が可能です。生産スケールを上げる際には、複数台で対応することになるが、装置は操作の熟練度やケアレスミスなどとは無縁なので、製造プロセスの質を変えることなくスケールアップが可能です。一方、培養容器のサイズや培養原理の変更を伴うスケールアップは、細胞の生育環境に影響を与えるため、変更がある度に製品の品質の同等性を確認しなければなりません。つまり、製造法確立の段階から当社の装置の導入をご検討して頂けば、治験薬の製造から商用スケールの製造をシームレスに進めることが出来ます。

なお、本パンフレットに記載の内容につきましては、当社の都合により予告なく変更する場合がありますので、その旨ご諒解願います。また、デモンストレーションやユーザートレーニング、有償使用の際のご宿泊や交通手段につきましてはお客様にてご手配、ご負担いただくようお願い申し上げます。当社と致しましてはお客様の装置導入のご検討や、実際のご使用がスムーズに進みますように可能な限りの努力を致しますので、本パンフレット記載の内容についてのご質問がありましたら、ご遠慮なく弊社の担当者にお問い合わせください。

図1 神戸医療イノベーションセンター (KCMI)

製薬やベンチャー企業向け実験室や再生医療等製品の R&D用の細胞加工施設などから構成される。当社ソリューションラボは5階に入居。(https://www.fbri-kobe.org/kbic/english/facility/から転載)

所在地:神戸市中央区港島南町 6丁目 3番 5号
(〒650-0047)
アクセス:ポートライナー『計算科学センター』駅直結

図2 ソリューションラボの見取り図 

A.前培養室、B.培地 / 試薬調製ならびに品質検査室、C.連絡通路、D. CellQualia ICP室、E.更衣室、F.前室、G.見学廊下